写真やフォトブックに関するインタビュー
写真やフォトブックに関するインタビュー
子どもや人物を独特の空気感で表現した写真が高い評価を得ている、写真家の鈴木さや香さん。一方プライベートでは、旅行先の風景や日常のシーンを切り取った写真で手作りの封筒や雑貨などを制作されており、ファンも増えています。そんな鈴木さんに、写真を使った雑貨づくりの楽しさを教えていただきました。
フリーランスのカメラマンとして仕事をするようになり、事務的な書類を送る機会が増えたという鈴木さん。
「最初は、市販の一筆箋にお礼を書き添えて書類を送っていました。でも、この一筆箋は、もらったほうからすると邪魔なものではないかと思ったんです。手書きのものって捨てるにも捨てられないし、取っておくにはいらないものですし…。
そこで、他に感謝の気持ちを伝えるものがないかと考えたときに、私が表現できるものは『写真』しかないと思い、写真を使った手作り封筒を作り始めました。」
まずは写真をプリントして封筒の形に折ります。その後、封筒ごと透明のビニール袋に入れ、宛名を書いたシールを貼って送るそうです。そうすることで受け取った人がその封筒を再度使えるように、という鈴木さんの細やかな配慮がうかがえます。
「手作りの写真封筒をお送りした方々から、『この封筒は売っていないの?』などと聞かれることが増えてきたので、たくさん作るようになりました。
その後、オーストリアの知り合いのギャラリーで売ってもらえることになったんです。販売するのは始めてだったのですが、ヨーロッパに縦型(長3サイズ)の封筒がなく珍しいということもあり、たくさんの反響がありました!封筒としてだけでなく、プレゼントのラッピングとしても使えると言って喜んでくれたお客様もいらっしゃいました。
それからは、日本でも知り合いのお店に置かせてもらったり、原宿の自分のお店でも販売するようになりました。今は、もっと封筒の可能性が広がらないかと模索中です。」
左から、洋2サイズ(500円)、長3サイズ(500円)、ぽち袋(非売品)。日本では縦型の長3サイズと、洋2サイズの封筒を各500円で販売中。写真の種類はさまざまですが、売り場にはひとつひとつにタイトルやコメントが書かれているので、それを読みながら封筒を選ぶ楽しさもあります。
「お店に置いてある封筒の写真は、ヨーロッパで撮影したものがほとんどです。フランスは2ヶ月くらい滞在したり、オーストリアやチェコでは知り合いを訪ねたり。そんな旅の風景を封筒にしています。」
今年の10月15日で一周年を迎えた、原宿にある鈴木さんのお店。お店の内装は、プロに基礎となる部分を作ってもらい、インテリアデザインや建築を学んでいた頃の知識を活かして後から自分でアレンジしているそうです。
「このお店は、浜辺にある海の家がイメージで、そこに住みついた猫がやっているお店をテーマにして作りました。もともと、シーグラス(海岸に落ちているガラスの破片)や流木など海を旅していたものが好きなので、昔から集めてきたものをお店のインテリアにも取り入れました。
普段はお店を貸し出したり、不定期でいろいろな写真家さんの作品を展示したりとギャラリーとしても活用しています。
写真封筒を販売している棚は、封筒のサイズに合わせて手作りしました。パリの古本屋さんをイメージして、ただ封筒を並べるというよりも、作品のイメージが広がるようなディスプレイにしています。」
<SHOP DATA>
Atelier Piccolo
東京都渋谷区神宮前6-27-8 京セラビルB1
定休日:不定休(店主がフォトグラファーのため)
営業時間:12:00~18:00
https://www.info-atelierpiccolo.com/
「私が作っている写真封筒は、写真を紙に印刷して折り、封筒にしているというシンプルなものです。封筒にする写真を選ぶときは、淡い色合いのユルフワっとした写真より黒が締まった写真で、男性が部屋に飾ってもいいようなインパクトが強いものを選んでいます。好みにもよりますが、そのほうが封筒のイメージがぼんやりせずに、1枚の絵のように存在感が出て私は好きなんです。」
風景写真の封筒を多く作っている鈴木さんですが、時には子どもの写真を封筒にしてプレゼントにすることもあるそうです。封筒にする前の写真と、それらを封筒にアレンジしたときの写真を見てみましょう。封筒にアレンジすることで、もとの写真とはまた違った雰囲気や可愛らしいさが浮き出てきて、素敵な作品に仕上がっています。
「私の場合、写真封筒に使う写真は、『あっ、いいな』『撮りたいな』と感じた気持ちを素直に表現した写真を選んでいます。なので、連作でストーリー性があるというより、1枚1枚の封筒の写真を完成品として見てもらえたらと思っています。また、ひとつひとつの封筒にもコメントを書いて、その写真を撮ったときの思いから、お客さんの想像が広がれば嬉しいです。先日、自分自身が妊娠&出産を経験したこともあり、新たに人物や子どもの写真での封筒作りも楽しんでいます。」
「私が最初に封筒を作り始めた頃、『A4の真ん中に見せたいポイントがある写真』と選べる写真が限定されていました。でも、今ではプリントの仕方や折り方を工夫して、封筒の前面に見せたいポイントを配置できるようになりました。
そうなると、今度は写真のどの部分を使うか考えるだけでも楽しい作業になりました。みなさんもオリジナルの封筒や雑貨を作る際は、写真のどこを切り取るか考えながら、自分の撮った写真の可能性や違った見え方、見せ方を探ってみてはいかがでしょう。」
「こうして友人の子どもや自分の子どもを写真封筒にしてプレゼントしたり、手紙を送ったりするととても喜んでもらえるんです。ぜひみなさんも封筒に限らず、プリントした写真を使って、いろいろな雑貨作りに挑戦してみてくださいね」
撮った写真をカメラやパソコンの中に眠らせておくだけではもったいない、でもその後どうしたらいいかわからない! そう感じている人は、多いのではないでしょうか?
そんな人は、まず写真をプリントアウトすることから始めてみるのもおすすめです。プリントアウトした写真の可能性は無限大です。少し工夫して、手作りの封筒や包装紙などを作って、自分らしさの詰まったアレンジにも挑戦してみましょう。
【執筆者 鈴木さや香】
東京造形大学で建築造形のデザイン科を卒業、演出家葉方丹に師事。
その後写真家山岸伸に師事。2012年独立。
現在、写真雑誌、CDジャケット、広告写真、動画撮影などを中心に活動の幅を広げている他、カメラメーカーなどの各ワークショップの講師を担当。
子どもや赤ちゃんのポートレート撮影を得意としている。
また、2015年より写真封筒の作家としても神宮前にアトリエを構える。