デジカメで上手に写真を撮影するテクニック
デジカメで上手に写真を撮影するテクニック
寒いからといって、出不精になってしまうのはもったいない!
この季節にしか撮れない、冬ならではの写真を撮りに出かけてみませんか?
冬は当然のように寒く、身体にもカメラにも厳しい季節です。が、四季の中で空気が一番澄んでいるのは冬の時期ですし、極寒の冬場だからこそ見られるフォトジェニックな風景もあるのです。
冬の印象を強く捉えるには、寒色である青さと、音を吸収してしまう雪の静寂さという体感を、写真の中に表現すると良いでしょう。
さぁ、寒さに負けず、しっかりと防寒して撮影に出かけてみましょう!
冬の寒い時期、早朝の水辺や森に出かけると、まるで湯気のように霧が湧き上がっていることがあります。これは、水温や湿度の高い地表の温度よりも気温が極端に低い時に起こる現象です。
みなさん、お湯を沸かすと湯気が立つのは当然ご存知かと思いますが、これは、熱せられた水がそれよりも低い温度の空気に触れたために気化した水が水滴になって目に見えるようになる現象です。冬の川面や森などで見られる霧も、同じ理屈なのです。水辺や森などの比較的湿度が高い場所の温度に比較して、気温が低ければ低いほど、その場と空気との温度差が大きくなるので、冷やされた空気中の水分がこのような現象を魅せてくれるわけです。水と空気の温度差が大きいことで、この現象が起きるわけです。
この条件は、前日の昼間に暖かく、翌日の早朝が急激に冷え込んだような気象条件の中で起こりやすいのです。さらに、風がほとんど吹かず、霧が流されてしまわないような日がベストです。
逆光と背景のシルエットを上手く活かしながら、白く湧き立つ朝霧を捉えてみましょう。
歌にも出てくるほど美しく煌めくダイヤモンドダストは、気温がマイナス10度を切るほどの極寒の朝に見られる風景です。
漢字では細氷(さいひょう)と書くように、空気中の水分が凍って小さな氷となって舞っている姿がダイヤモンドダストなのです。
目には美しく見えても、明るい雪の背景の中では、なかなか写真に捉えることが難しいですが、朝の逆光と背景の日陰とのコントラストがある場所を見つけると、煌めきがより一層はっきりと写せます。ベストアングルを探して挑戦してみましょう。
上手くいけば、作例写真のようなサンピラーと呼ばれる柱状の太陽の光の中に煌めくダイヤモンドダストを捉えることができます。
冬枯れした樹々を、白い花が咲いたように見せてくれる樹氷。
これは、単に樹木に積雪や着雪しているのではなく、ゆっくりと0度以下に冷やされていった霧などの空気中の水分が、微風に乗って樹々に接触することで白く結晶化して成長していった自然現象なのです。
とても繊細でもろく、少しでも風が強く吹くと崩れて吹き飛んでしまいます。
冬の夜間、雲が出ている時は、まるで布団をかけているかのように地表が保温されるのですが、雲ひとつない晴天状態だと、地表に近い部分の熱がどんどん奪われていくので、曇っている時よりも極度に空気が冷えていく、放射冷却という現象が起きます。
そういった過剰にかつゆっくりと冷やされていった空気や空気中の水分が樹氷などの美しい自然現象を織りなしてくれるのです。
つららは、地表に向かって落ちようとする水滴が落ちる前に冷やされ凍って伸びていったものですが、起伏のある地表の水分が徐々に凍りながら伸びていくと、まるで氷の鍾乳洞のような氷柱が現れます。ただ単に冷やされて凍るだけでなく、その表面が日中に温められて少し融けて水になり、そしてまた冷やされて氷になって膨張していくことで成長するのです。
実は、つららも氷柱も、漢字で書くと同じなのですが、ここでは、地表から伸びて成長している氷の柱状態のものを氷柱と表記させていただきます。
透明な部分が多く、キラキラと光輝くつららも、背景との組み合わせで素敵な風景に写し撮れます。比較的発見しやすいのですが、ありきたりと思わず、いろんな構図にチャレンジしてみると面白いでしょう。
この作例写真では、背景に流れる滝をスローシャッターで捉え、水の、流れる時間と凍りつき止まった時間とが同じ画面の中に同居する不思議な世界を魅せています。
暖かい季節なら、全てを押し流す勢いと轟く水の音を持つ滝も、冬の極寒の気候の前では、なすすべもなく巨大なつららのように凍りつきます。
迫力のある滝であればあるほど、力ある姿と音さえも凍りつかせた、静寂が不思議な空間を生み出してくれるのです。
凍てつく寒さをさらに強調したいときは、ホワイトバランスを電球マークにして撮影してみましょう。屋外でホワイトバランスを電球マークにすると、寒色である青い色味が強調された色合いの写真になります。
太陽マークで撮影しても、氷はアイスブルーと言われる青みがかかった色合いに見えますし、日陰ですとなおさら青みが強く写ります。ホワイトバランスを電球マークにして、その青さをさらに強調することで、寒さの印象を強調した写真が撮影できます。
正面から対峙するもよし、凍てついた迫力を下や裏から煽るもよし、トライできる様々なアングルから撮影してみましょう。
滝のそばの岩場や地面は、濡れ落ち葉や苔以上に滑りやすくなっていますから、くれぐれも足元には注意して、無茶をせず、良い写真を撮っても、足元を取られてコケないように気をつけましょう。
冷え切った窓に付着した空気中の水分が徐々に凍ることで、美しい結晶状の姿を見せてくれるのが、フロストフラワーと言われる現象です。
窓の外の景色と、上手にコラボさせて撮ってみましょう。白い結晶の背景は、暗めの場所を選ぶと引き立ちますよ。
これならお部屋の中から狙えますから、山岳地への旅先の朝など、起きぬけの窓に注目してみましょう。
霜柱は、土の表層のすぐ下の水分が凍って柱状に伸びていく現象です。
少し湿り気味の地面を、水平に近い状態からじっくり眺めてみると、比較的発見しやすい冬の自然現象です。この写真のように、落ち葉の下で起きていることもあります。
カメラを地面すれすれの低めの位置に構えて、マクロや標準ズームの望遠側でグッと近づいた距離で撮影してみましょう。
水は、流れている状態ではなかなか一気に凍らないのですが、流れの遅い部分から氷になり、その後、次第に気温の低さと最初に出来た氷の温度に負けて凍っていきます。
湖のように、あまり流れのない水面が氷結するのとは異なり、流れのある水面が凍ると、部分部分の氷結速度や水の状況によって、美しい紋様を描いてくれるのです。
花火といえば夏の風物詩と思われている方がまだまだ多いかもしれませんが、スキー場や観光地など、今や花火は、冬のイベントにも欠かせない演出になってきました。雪や氷の寒さを感じる風景と、花火の暖かさを感じさせる色あいとのコラボレーションは、不思議な感覚の新しいイメージを生み出すのにとても素晴らしい組み合わせになることでしょう。
風景や打ち上げ場所をしっかり情報収集し、下見して、ベストな構図で狙えるポジションを確保しましょう!
これらの現象の多くは、冬でも、一番冷え込む日の出前後の時間帯に起きる現象がほとんどですから、まだ暗いうちから起き出して、薄明るい時には撮影できる状況にしっかり準備しておきましょう。
ここに紹介した以外にも、流氷や諏訪湖の御神渡り、そして空気の澄んだ夜空に展開する天体ショーやオーロラなど、国内海外問わず、冬ならではの寒い気候や自然現象によって起きる特別な風景には、まだまだ様々なものがあります。
くれぐれも、体もカメラも冷やしすぎないように、そして足元にも気をつけながら、冬の撮影を楽しんでくださいね!
【執筆者 川上博司(かわかみ ひろし)】