デジカメで上手に写真を撮影するテクニック
デジカメで上手に写真を撮影するテクニック
日本の春といえば桜の季節ですね。
写真好きの方なら誰でも一度は撮影されたことがあるかと思いますが、
桜の花びらの淡い色合いや繊細さを美しく写真に表現するのは、意外とムツカシイものです。
今回は、桜を撮影する時のちょっとしたコツや心構えをご紹介します。
桜の花びらが持つほのかな色の再現は、思った以上に繊細なものです。色の濃い桜なら比較的明確に色表現ができるのですが、ほぼ白に近いうすい桜色の花びらの色を撮影しようとすると、露出の調整がムツカシイのです。
白っぽい花びらを撮影するときは、カメラは明るいと判断して少し暗めに写そうとします。そのような場合は、露出補正機能を使って+側に補正して明るめに調整すると良いのですが、明るく調整しすぎると色が素抜けの真っ白になってしまうことがあります。すると、桜の花びらの表面の質感や繊細さが失われてしまいます。
そんな時は、撮影したらすぐに再生して、真っ白になってしまった部分を教えてくれるハイライト警告機能や、色や明るさのバランスを確認できるヒストグラムという機能を使って撮影された写真の状態を確認し、できるだけ正確な露出に設定しましょう。
桜の花びらはとても薄く軽いので、風が吹いているとフルフルと震えるように動きます。そして細くて長くしなやかな桜の枝も、軽く風が吹くだけで大きく揺れます。風によって起きる桜のブレは、被写体ブレと言って、三脚では防ぐことのできないブレです。
そのような場合は、風が止むのを待つか、スポーツを撮影する時のような1/250よりも早いシャッタースピードにして撮影しましょう。
ISO感度を大きな数字に設定すると、シャッタースピードをより速くしてブレを防ぐことができますが、ISO感度の数字が大きくなればなるほど、写真がざらついた感じに仕上がります。スマホの画面のような小さなサイズや、パソコンのモニター上だけで鑑賞するにはさほど気にならないかもしれませんが、少し大きくプリントすると、桜の花びらの淡いトーンがざらついているのがわかってしまいます。
ただし、桜の花びらが風でブレて、モヤっとした写真になってしまうようでは、写真全体の美しさを損なう場合があります。
そのあたりのシャッタースピードの設定を考えながらも、ISO感度は100から400くらいまでのできるだけ低めの感度で撮影することをオススメします。
桜は小さく細かい花が一面に咲くので、背景との差をうまく作らないと奥行きのない写真になりがちです。
奥行き感を活かしながら桜を立体的に撮影するには、望遠レンズやマクロレンズで花に思いっきり近づいて背景をぼかして立体的に撮影する方法や、背景との色あいの差をはっきりさせて浮き立たせる方法があります。
濃いピンク色の桜でしたら、青空と桜という色の組み合わせも良いですし、山桜の系統ですと、花と新緑の葉が同時に展開するので、背景を淡い緑にするのもよいでしょう。
もちろん、同じ系統の色の中に入れても、前後の明るさの差で主役を浮き立たせる方法もあります。
ホワイトバランスは、多くの場合オートでも大丈夫ですが、晴れて太陽が顔を出している時には太陽のマークに、曇っているときは曇りマークになど、光に合わせたホワイトバランスにセットしたほうが、桜の花びらの色合いが安定して表現できます。
曇り空の下で太陽マークのまま撮影すると、写真が少し青みがかってしまったり、画面の中に強い色が入ると、オートホワイトバランスでは色味が見た目と違ったりする場合があります。ホワイトバランスを光の状態に合わせて調整すると、より適切で安定した色合いで撮影することができます。
ホワイトバランスを使った裏技としては、電球マークのホワイトバランスに設定すると、写真全体を青みがかった色になるので、朝もやの雰囲気を表現することができます。
ホワイトバランスを蛍光灯のマークにすると、写真全体の色味がピンクになるので、桜の色のピンク色のイメージを強調することができます。
このように、ホワイトバランスを調整することで写真の印象を大きく変えることができます。たまにはこんな裏技も楽しんでみましょう。
ライトアップされた夜桜も、フォトジェニックな風景ですね。
ここでの重要なポイントは、夜空とライトアップされた桜に当たった照明との明暗のバランスやコントラストです。部分によって照明が強く当たりすぎていると、桜の花が部分的に真っ白に飛んでしまいます。
夜景だからといって、完全に陽が沈んだ空が暗い時間帯に撮影すると、背景となる空がベタッと黒く沈んでしまい、奥行き感が感じられない写真になります。
桜の夜景撮影をするときは、陽が沈み切る前に撮影ポイントを決めて、次第に暗くなっていく空とライトアップされた桜の明るさがバランスよく表現される瞬間を狙いましょう。
見た目では真っ暗に見える空でも、微妙な明るさが残っている時間帯であれば、写真には空のグラデーションが綺麗に出る瞬間があります。
露出は、桜に当たった照明の明るさに合わせましょう。
桜に当たった照明の強さは変化しないので、マニュアル設定で絞りとシャッタースピードと感度を設定して固定します。そうすれば、背景の空が暗くなっても、桜の部分の露出は一定で変化しないので、周りが暗くなっても桜が露出オーバーになることを避けることができます。
なにより、桜が綺麗に表現される露出設定が重要です。そこに、背景の夜空の暗さ加減をうまく合わせてタイミングを見ながら撮影するのが良いでしょう。
桜は並木になっている風景や、山肌に密集している風景、はたまた公園の中心にシンボルツリーのように立っているものなど、様々な形態があります。
それらを風景の一部として捉えるのも良いですし、桜の花に近づいて花を主体に、背景となる風景と組み合わせて撮るなど、様々な撮影パターンが考えられます。
みなさんもオリジナルの視点で、桜の美しさを撮影してみましょう。
桜は、咲き誇っている時も美しいですが、舞い散る姿や、散って地上に落ちてからも美しく写真になる、最後の最後まで撮影が楽しめる花です。
桜の写真撮影にルールがあるとしたら、桜を美しく撮ることくらいです。
セオリーやルールに縛られることなく、思い思いの桜の写真を撮ってみてください。
素敵な写真が撮影できたら、プリントしてポストカードや額装して飾るのも良いですし、フォトブックにして、オリジナルの写真集を作るのも良いでしょう。
桜の咲く風景は、年に一度のほんの数日の、日本ならではの素敵な風景です。去年の桜の写真よりももっと素敵な写真が撮れるように、しっかり準備して挑戦しましょう。
【執筆者 川上博司(かわかみ ひろし)】