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鉄道写真家 長根広和インタビュー

見開きを活かせば、フォトブックはもっと楽しくなる。起承転結を意識したフォトブックの構成とは。

MyBook FLAT とは?

見開き部分が180°フルフラットに開く新しいタイプのフォトブックです。

ノド問題から解放された装丁

MyBookのARTシリーズを含め、本には「ノド問題」があります。ノドは本の綴じ部のことです。

綴じ部に列車が来てしまうと、左右のページで別れたり、綴じ部に巻き込まれて一部が見えなくなったりします。僕たちプロカメラマンは、常にノドを意識して、列車がノドに来ないような構図で撮影しています。でも、中には意図的に日の丸構図にすることもあります。そういう写真は本に載せたくても見開きでは使えないので、小さな扱いになっていました。でも、プロは欲張りなので、良い写真は見開きで大きく使って欲しいと思っています。

MyBook FLATはノドの巻き込みを気にせず、日の丸構図の写真をドーンと大きく見せることができるのが嬉しいですね。僕は今回、フルフラットという特徴を活かして、飾ったときに掛け軸風になる縦見開きで作った『TRAIN KAKEJIKU』と、最初から最後までのページが線路で繋がっていく『Go On And On』という2冊のMyBook FLATを作りました。

待望のフルフラットで大きく見せる

2018年にMyBook FLATが出て嬉しかったですね。ノドを気にせずお気に入りの写真を大きく配置できるので、フォトブックを作る可能性が広がりました。

仕上がりの色はMyBook FLATもほかのMyBookも変わりません。僕はキャリブレーションをしっかり合わせたモニターで作品を見ていますが、自分のイメージした色がそのまま出るのは嬉しいです。プロやハイアマチュアの方は色にすごくこだわっていて、自分のイメージを作り込んでRAW現像する人も多いです。MyBookは家のモニターで見た色が、そのまま美しくプリントされるので安心感があります。

作品を素敵にまとめる3つのヒント

時間軸を意識する

フォトブックにまとめる時、写真のセレクトはとても重要です。いちばんやってはいけないのが、自分の好きな写真をただ集めて並べること。作った本人は大満足かもしれませんが、見た人は何も伝わりません。

僕はセレクトをする時、起承転結の構成を大切にしています。『TRAIN KAKEJIKU』の場合は、まず春夏秋冬という季節の流れを作り、季節が進んでいると同時に朝から晩へと一日の時間軸も変化するように並べました。ページをめくるときに、春秋冬夏とか、夕朝夜昼などバラバラだと、見ていて違和感を覚えます。季節や朝から晩というように時間軸を意識するとストーリーが作りやすくなり、1冊のまとまりがよくなります。

視線を動かす仕掛けを作る

列車を配置するときは、ページをめくる時の視線の動きを意識しています。例えば、列車の配置を右ページにしたり左ページにしたりと交互に配置すると、視線が左右に動きます。主役の列車が下にあれば目線が下に、上にあれば上に行きます。列車の配置を左右上下に意図的に変えることで、ページをめくるたびに目線が動いてフォトブックを隅々まで見せることができます。また、列車の向きも重要で横⇒正面⇒横⇒正面と同じ向きが続かないように並べています。

逆に『Go On And On』は、見開きで横長の画面を活かす構成になっています。大扉に『Go On And On→→→』と入っていて、矢印から線路がはじまって線路が続くように位置を揃えています。これも線路がずっと同じ高さだと視線が固定されてしまうので、途中で上から下に降りるなど視線が左から右、上から下へと動くように意識して作りました。

タイトルや表紙デザインにこだわる

『Go On And On』は「行け!」とか「進め!」という意味のタイトルです。じつは線路の消失点にタイトルの「A」を置いているんです(笑)言わないと気付かれにくいのですが、ちょっとしたこだわりです。フォトブックを作る時は、遊び心のある「しかけ」を作るように心掛けています。『TRAIN KAKEJIKU』の表紙のデザインもこだわりがあって、表紙は線路を奥から手前へ走ってくる列車にちょうど太陽が沈んでいる瞬間の写真、裏表紙は太陽が沈んだ後に手前から奥へ列車が走り去っていく写真を選びました。そして表紙と裏表紙を開いてみた時に、きちんと繋がるように2つの配置を合わせました。

また、タイトルに使うフォントもこだわった方がいいですね。主張が強い個性的なフォントは写真の邪魔になってしまうので。フォントはシンプルなフォントの方がいいと思って選んでいます。

形に残すことで写真は上手くなる

鉄道の撮影はシャッターチャンスが1回だけなので、鉄道ファンの人は撮れたら満足して終わってしまう人が多い気がします。でも、写真は撮るだけでなく、最終的にプリントやフォトブックにするなど形に残した方がいいと思います。撮影時にノドを意識して構図を作ったり、撮影後に改めて写真を見直してセレクトしたりする作業は、自分の写真を客観的に見ることができるので上達にも繋がります。

作品集を作るとなると、ある程度枚数を撮りためないと起承転結という流れを作るのが大変です。MyBook ARTは綴じがあって本らしい形なので、メインカットやサブカットを入れて緩急を付けながらストーリーを作っていきますが、MyBook FLATなら『TRAIN KAKEJIKU』のように主役級のメインカットだけで構成しても形になります。フォトブックをまとめるのは大変という人もいますが、自分の写真がよりよく見える構成を考えるのは楽しい作業です。主役級の作品なら、1見開き1作品なので複雑なレイアウトを考える必要がないので、流れさえ作ればきれいにまとまります。写真を撮ったらぜひ、フォトブックという形に残してほしいですね。

長根広和

1974年横浜生まれ。武蔵工業大学(現 東京都市大学)工学部機械科卒業後、鉄道写真家・真島満秀氏に師事。2009年真島満秀写真事務所を継承し、現在(有)マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ代表取締役。
青春18きっぷなどのJRポスターや、鉄道雑誌、旅行雑誌などで活躍。JTB時刻表の表紙写真を会社として毎月担当し、鉄道ダイヤ情報ではカラーグラビア「鉄道瞬景」を連載中。近年は写真専門誌での鉄道撮影テクニックの解説や、鉄道撮影地ガイドの執筆などにも力を入れている。「列車の音が聞こえてくるような作品」をモットーに日本全国の鉄道を追いかけている。
長根広和HP:Hirokazu Nagane Web Site
Facebook:naganeman

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