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- 鉄道写真家 鈴木啓太インタビュー
オールドレンズでポートレート作品を撮る写真家・鈴木啓太/ urbanさん。オールドレンズの魅力は、柔らかで繊細な光の描写です。大切な作品をまとめる時に、意識していることを鈴木啓太/ urbanさんに伺いました。
オールドレンズとは?
フィルムカメラ用に作られた交換用レンズ。マウントアダプターでデジタル一眼等にも取り付けることができます。マニュアルフォーカスのものが多く、独特の味わいが魅力です。
僕の家は、小さい頃から母親がアルバムをまとめていたんです。透明フィルムを剥がして写真を貼り付けるタイプのアルバムで、小さい頃はそれを見るのがすごく好きでした。
その後も写真を撮ることは好きでしたが、大学の時に譲ってもらったデジタル一眼カメラで短焦点レンズの大きなボケに魅了され、そこから写真にどんどんハマっていきました。最初はデータのまま写真を見返す程度でしたが、当時付き合っていた妻の誕生日に、ふたりの思い出を形にしてプレゼントしたくて初めてフォトブックを作りました。妻はそのフォトブックをすごく喜んでくれ、写真をまとめて形に残すことは、ハードディスクに保存してパソコンで見返すこととは大違いだと気づきました。
写真をまとめることは、大きく分けて2つあると思います。1つは思い出をまとめるということと、2つめは自分の作品をまとめることです。写真のセレクトや構成次第で、写真の受け取り手の見え方が変わるので、自分の作品をいかに見せるかと考えるきっかけにもなりました。
僕は現実のイメージとは違う、記憶の断片のような抽象的なイメージや曖昧な表現をしたいと思っています。現行のカメラやレンズだと、きれいに写りすぎてしまうんです。反対にフィルムカメラの時代に設計されたオールドレンズの柔らかく、色も淡い描写が僕の作品イメージにピッタリだったので、デジタルカメラにオールドレンズを付けたり、フィルムカメラで作品を撮り続けています。
オールドレンズの描写を活かして撮影すると、ハレーションやフレアなど光の印象がとても強くなります。僕はMyBookのARTシリーズで選べる「ラミネート加工-つや消し(以下、ラミつや消し)」という、しっとりとした質感の紙がすごく好きです。光沢のある紙だと、光の印象がキツくなりますが、落ち着いたマットなラミつや消しは僕の作品のイメージに合っていました。
またオールドレンズの魅力の一つ、光のにじみや周辺光量落ちはとても繊細な描写ですが、MyBookは紙も印刷もクオリティが高いので、きちんと再現されます。
「ラミつや消し」は、フィルム写真とも相性がとても良いです。フィルムは独特の柔らかい色が特徴で、デジタルの色とは違います。フィルムの種類によって発色が違いますが、「ラミつや消し」は、どんなフィルムでも特有の色が再現されていました。
表紙はフォトブックの顔で、第一印象に影響します。表紙に、大好きな「つや消し」が選べるようになったことは、個人的にすごく嬉しいです。表紙と中身の一体感が出て、僕の表現したい世界がより伝わりやすくなったと思います。
紙選びは作品のテーマや個人の好みで変わります。作る側からすると、選択肢が多いということはメリットですね。
フォトブックは「流れるように読んで欲しい」と思っているので、まとめる時はリズムやテンポを大切にしています。また、フォトブックは見開きで印象が決まるので、左右の写真に関連性を持たせるようにしています。
今回作ったうちのひとつ『Alderson Loop∞』という作品は、オールドレンズをつけたデジタルカメラとフィルムカメラで撮影した写真が混在した作品集です。このフォトブックでは、左右の写真の構図が似ているとか、被写体の形と人物の傾きが同じ方向を向いているとか、見開きの写真が対になるように意識しました。
ブックをまとめる時、「最初にテーマを決めましょう」とよく言われますが、僕の場合はテーマを後から決めることが多いです。
パソコンの中に「いつか使いたい写真フォルダ」を作っていて、普段撮った写真をそこに貯めています。その写真をパソコンで眺めて、この写真はこんなテーマでまとめられそうだなとインスピレーションが浮かんで作り始めます。
『Alderson Loop∞』は、赤いポートレートと青いポートレートの2枚の写真を使いたいという想いから作り始めました。
まず、赤と青は対だと思い、そこから「対になるものは何があるか?」と考えて、夜と朝が思い浮かびました。さらに夜と朝について掘り下げて考えて、夜と朝は毎日繰り返されるので、「ループ」をテーマにしようと。写真のキーワードから、どんどんブレイクダウンしてフォトブックのテーマに落とし込みました。
テーマが決まったら構成を考えながら、「いつか使いたい写真フォルダ」に溜めた写真からセレクトしていきます。
MyBookのエディターは操作が簡単ですごく使いやすいです。レイアウトを考える時も、エディターでページに写真を割り当てて、全体のレイアウトを俯瞰で見ながら組んでいます。
作品集は「自分の作品を見て欲しい」ので、写真集を組むときは読み手を飽きさせず、何度も見たくなる仕掛けを意識しながら組むようにしています。
『Alderson Loop∞』の構成は、夕方から夜になって、夜が明けて朝になるという1日の流れです。実は、夜から朝に切り替わるページは、わざとデータを反転させた左右対称の見開きページを作りました。
余白を付けた横位置写真の見開きを流れるように並べていた中に、急にインパクトのある見開きを入れることで、視線の流れを止める。そしてまた、最後まで流れるように並べる構成にしました。読み手に違和感を投げかけることで、少しでも興味を引き留められたらなぁというのが僕の意図です。
もうひとつの作品『OLD LENS × PORTRAIT』は、オールドレンズのカタログ的な作品集です。この写真集は、最初と最後の写真は、1枚の写真を切り離したものをレイアウトしました。
最後の写真を見て、最初のページを見返したら、じつは最初と最後のページがつながっていることがわかるようになっているんです。それに気づいた人は、また最初に戻って見返してくれるんですね。
フォトブックをまとめる時、作品をたくさん見せたいので100ページを超えてしまうこともよくあります。でも、読み手の見やすさを重視すると、50ページくらいの「ちょっと足りない」と思えるページ数が丁度よいと思っています。もっと見たいから、もう1度作品集を読み返す…というイメージです。
大切な作品だからこそ、多くの人にたくさん見てもらいたいというのは写真が好きな人なら、自然と抱く感情だと思います。
スマートフォンのカメラが高性能になり、写真を撮ることが当たり前になっています。その一方でプリントやフォトブックなどの形に残す人はそこまで増えていない気がします。僕は作品集や子どもの成長記録を、半年に1回程度定期的にまとめています。フォトブックにすると、自分の作品や子どもの成長に向き合えるので写真はもっと楽しくなりますよ。
鈴木啓太/ urban
オールドレンズポートレート写真家。
オールドレンズを用いた企業および地方団体のビジネス写真撮影の他、世界的バイオリニスト等ミュージシャンの専属カメラマンも行う。玄光社「フォトテクニックデジタル」においてオールドレンズのすすめの連載や「オールドレンズ・ライフ 2018-2019」への寄稿など雑誌媒体をメインに活動。毎月フィルムワークショップを主催するなど、オーガナイザーとしても精力的に活動している。
Official HP:https://www.urbanartgraph.com/
フィルムさんぽ -FilmPhotoWalk-:https://urbansoul00.wixsite.com/filmsanpo/
Twitter:@urbansoul_00
Instagram:@urbansoul00
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