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写真家 山本まりこインタビュー

作品集を残す経験、乗り越えた先に成長した自分がいる


写真家・山本まりこさんの写真教室Room5656。2019年7月に11期生の写真展「TOKYO2019」が開催されました。広々とした会場に29名の作品が並ぶ会場は風が吹いているような気持ちの良い空間。そこにはそれぞれの想いが詰まったマイブックも展示されました。今回のテーマや作品をまとめることについて、山本まりこさんに伺いました。

一人ひとりの表現を大切にしながら1つの空間で魅せる


── 今回の展示「TOKYO2019」のコンセプトをお聞かせください。

山本:今までの5656の展示は本来ギャラリーでは無い場所や小さなギャラリーをお借りして、コンセプトに合った装飾や小物づくりにも力を入れて、来場者の方に楽しんでいただきました。今回は初めて大きなギャラリー(注:ギャラリー・ルデコ(LEDECO))をお借りしての展示となったので、”作品を魅せる”ことを意識し、あまり装飾をしない展示にしました。

── 作品1つ1つがより際立ちますね。

山本:今回は一部の展示以外、どんな展示にするか生徒のみんなに全て自由に決めてもらいました。
どんな表現をしてくるか分からない、自由でバラバラな作品を1つの空間に展示し、統一感を持たせることに苦労しました。

── とても調和が取れていて、空間全体のバランスが素晴らしい展示になりましたね!生徒さん一人ひとりのスペースは事前に決められていたのですか?

山本:どんな作品になるか出てくるまで分からなかったのでスペースを決めることはせず、出来てきた作品を見て私の独断で決めさせてもらいました。

作品は必ずマイブックに。高いハードルを超える意義


── まりこさんのクラスでは、いつもマイブックを作っていただいていますね。

山本:各クラス、必ずマイブックを作るようにしています。デジタルの時代、みんな撮ったものをパソコンにしかおいていない、生徒の中にはプリントすらあまりしたことのない人も出てきました。最初から「自分の写真集を作る」経験をしたことのある生徒はほとんどいません。最初は「自分の写真なんて」と、謙遜ではなくみんな本音で思っています。

でもマイブックを作ってみると、必ずすごく喜ぶ。自分の作品がいつでも手にとって見れる、ずっと残っていく、そういう経験をすると自分の作品の素晴らしさに気づくことができます。こんな体験、ぜったい写真が楽しくなりますよね!良いショットが撮れた!という経験は時間がたつにつれ忘れてしまうこともあるけれど、そんな写真を手にとって確認出来ることは、成長のためにも大切です。


── そういった意味で、1枚ずつのプリントとマイブックの違いはどこにあるのでしょうか。

山本:プリントは1枚単位で完結するけれど、マイブックは作品の集合体。1冊作り上げるのは生徒にとってちょっとハードルが高い経験です。「自分の作品を作り上げる」という経験。最初は課題として強制的に作ってもらいますが、完成したマイブックを手に取るとみんな自分の写真に自信が持てる、楽しくなって必ず「次の1冊」に挑戦するようになります。「自分の世界で撮っている作品」から「人に見られることを意識した作品」にステップアップしますね。

── 「人に見られる」という意味ではInstagramも人気ですね。

山本:Instagramも1枚1枚の写真のきれいさが重要ですが、マイブックは集合体なので別の技が必要になります。構成、バランス、タイトル、テキスト等。1枚の写真が上手でも、マイブック作りにはさらに成長できる余地があります。


── マイブック作りが上手な生徒さんの特徴はありますか。

山本:色々な写真集を見たり、写真雑誌を見るのはとても勉強になりますね。普段からそういったことをしている生徒は、最初からステキなマイブックを作れます。たくさん見ることで、引き出しも多くなると思います。

新たな表現に挑戦!マイブックづくりを楽しもう


── たくさんの生徒さんに勧めていただいているマイブック、山本まりこさんのお気に入りポイントを教えてください。

山本:とにかく上質!編集ソフト(MyBookEditor)が使いやすいから作りやすい!それと中のページで選べるマット(ラミネートつや消し)の紙がとってもお気に入り!なかなかあの質感は無いから、大事です。

── これからマイブックを作る生徒さんへのアドバイスはありますか?

山本:マイブック作りは「写真の楽しみ」の一環です。最初はみんな躊躇してしまうけど「とにかく1冊つくってみて!」と伝えたいですね。

── 今回はまりこさんにもマイブックで新作を作っていただきました。

山本:今回も工夫しましたよー!あえて右開き、文字は縦書きにしてまとめてみました。変わりゆく東京の街並みをたくさん見せて、文章のあるページ、無いページ、余白、見開き、映画のようなストーリーを感じられるリズムを意識しました。両親と一緒に東京をめぐり、さいごにはクライマックス、見せ場となる作品をのせて・・・少しミライ的な読み物としてまとめてみました。


── 今までの作品とはテイストが違い、まりこさんの新しい魅力を感じました。短編小説を読んでいるような・・・。生徒さんのマイブックも、みなさんステキですね。

山本:最近はみんな中身をしっかりと組み立ててマイブックを作れるようになってきました。きちんとコンセプトがあって、ちゃんと「自分の撮りたいもの」が見つけられている感じ。ぼんやりと「こんなの撮りたいなぁ」ではなく、ちゃんと構成を考え、実行してマイブックにまとめています。

── 本当にたくさんの魅力的な作品を拝見できました。まりこさんとRoom5656のこれからの作品も楽しみにしています。

山本まりこさん、Room5656の生徒のみなさん、本日はお忙しい中ありがとうございました!

山本まりこ

写真家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。撮影、執筆、講演、講師、テレビ出演など活動は多岐。著書は「エアリーフォトの撮り方レシピ」など10冊。 2011年から熊野古道に通い出し、日本カメラ社より写真集「熊野古道を歩いています。」を出版。現在は神奈川県の小さな海まちの古民家暮らし。好きな食べ物はカレーとイカ。
Instagram:yamamarimo



Room5656

2014年8月1日に開講した、写真家・山本まりこさんが主催する写真教室。「Room5656(るーむ ごろごろ)」というちょっと変わった名前は、「気をはらず、のんびりごろごろ(5656)楽しく写真を学んでいこう!」という山本まりこさんの想いからつけられました。写真展の開催を目指す半年間の定期クラス、月1回の1dayクラスが設けられています。



撮影:北原シンジ

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