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写真やフォトブックに関するインタビュー

撮りたいと思った一瞬の出会いを逃さない「よい旅とよい写真」

撮りたいと思った一瞬の出会いを逃さない「よい旅とよい写真」

皆さん、こんにちは。写真家のTATSURO(たつろう)です。

前回に引き続き、写真撮影についてお話いたします。私は普段、都内で自社撮影スタジオを経営しながら、主に広告・書籍・音楽の分野でポートレート撮影をしています。その仕事の合間に数年前から時間を作って世界へ旅に出ており、現在までに80カ国を渡航してきました。世界で撮った写真は、キヤノン、ニコンのメーカーギャラリーなどで新作発表、出版などもしております。

今回のテーマは「旅と写真」です。まずは、撮りたいと思った一瞬の出会いを逃さないために必要な「スマートに旅をするための知恵、持ち物、下準備など」についてお話いたします。誰でも海外旅行が自由に行けるようになった今の時代、SNSをはじめ様々な出版物でも世界の写真が見られるようになりました。そのため、僕が渡航するのは南米やアフリカなど一般の方が訪れない国を選んでいます。ネットに溢れているような有名な場所の写真ではなく、“冒険家”として新たな場所を発見する気持ちで行き先を決めているのです。

多くの方が旅行先に選ぶ、アジアやヨーロッパ。この辺りは安全な場所が多いし、心配ないと感じる人もいるようですが、それでも油断していると大きな被害に遭います。僕の周りでも、世界中から多くの観光客が訪れる国でスリや強盗にあった話をよく聞きます。被害にあう人はカメラを首からぶら下げていたとか、ポケットに財布を入れていたとか、不用心な格好をしていたそうです。日本以外でそんな格好をしていたら絶対にダメです。日本でも、もちろん最低限は気をつけないといけませんが。

高額紙幣はパスポートと共に首や体に密着できる袋に入れて、少額紙幣は前ポケット2つの深いところに分けて入れておきます。女性などでポケットがない服装の場合は、体に密着できるショルダーバッグなどがオススメです。支払い時は少額紙幣であっても表に出さずにポケットの中(鞄の中)でさぐって必要な額を取り出すという具合です。高額紙幣が必要なときはトイレや木陰で胸の密着袋から取り出します。とにかく周りに自分の金品をアピールしないことが被害に合わない条件です。

僕の場合は、この写真のようにカメラをいつもショルダーバッグに隠していて、撮影するときに一瞬だけ出し、シャッターをきったらすぐバッグにしまいます。

よい旅とよい写真




カメラを表に出した瞬間に狙われますし、盗られてしまうことを恐れて撮影も短時間にしています。カメラを外に出しているのはほんの数秒だったにも関わらず、僕を見かけた現地の人達に「そんなに高価なものを出したら狙われるから気をつけなさい」と言われたこともあります。80カ国旅をして、これまで一度も被害にあったことがないのは上記のような心がけをしているからだと思います。皆さんも気を抜かず、常に周りに気を配って旅を楽しんでください。

それでも被写体によっては、時間をかけて撮影しなければならないこともあります。そのときは撮影中だけでなく、カメラをバッグに収めたあとにも周りを警戒します。以前、南米パラグアイで金品を狙う強盗から、あとをつけられたことがありました。そんなときは歩く方向を変えたり、“こっちはあなたの存在に気づいているよアピール”をしたりします。相手をチラチラ見て、バッグを手でガードして“盗らせないよアピール”です。それでも危険だと感じたときは、タクシーに乗って回避します。

けれど、流しのタクシーも強盗の可能性はありますし、ローカルバスもこちらが日本人だとわかるとぼったくる輩が多いですから、乗車賃が相場より高いと感じたらきちんと値段交渉などをしないといけません。

よい旅とよい写真




よい旅とよい写真




こちらがいくら乗車前にきちんと交渉しても、最後には法外な値段を言われることがあるので、人を信用できなくなります。でも、それでいいんです。常に疑心暗鬼な精神が、写真撮影をする良い環境づくりに繋がります。騙されて身ぐるみはがされたら撮影どころじゃないですからね。

けれど、そんなに周りの危険ばかり気にしていると撮りたいときに撮りたいものが撮れないのでは、という疑問も沸いてきます。カメラをバッグから出してから一瞬では露出も合わせられない、と。そうですよね。だから僕は、常にカメラの設定はそのときの気候に合わせてブレないシャッター速度やISO感度、撮影イメージのF値などをあらかじめ設定しておきます。

天気の良い日中はISO感度を100か200、絞りをF4にしてシャッター速度はオートにしていることが多いです。曇天時はISO感度を400か800、シャッター速度を固定の1/200にして、F値はオートがオススメです。それでも急な天候の変化などで露出がばらつく場合も考慮して、RAWデータでも記録。あとから明るさを調整できるようにしておきます。

綺麗な画質を保つためになるべくISO感度は低い方が良いので、その分F値の明るいレンズを持っていきます。「どんな機材を持っていくのですか?」と聞かれて回答するといつも驚かれるのですが、僕が海外に行くときは毎回、ボディ1台レンズ1本です。パソコンも持っていったことはありません。三脚も持っていきません。機材周りを身軽にしておくことで危険も回避できるし、遭遇率も下がるはずです。

それでも困ったことはさほどありません。最近のズームレンズはF値も2.8と明るく、ズーミングも24mm〜135mmくらいまでカバーしているものが各メーカーから出ています。200mmくらいの望遠レンズで撮りたくなったとしても、とりあえずは手持ちのズームレンズの最大望遠で押さえておけば、トリミングで画角を調整できるのです。1枚あたりの画素数も高いカメラが多くなってきているので、トリミングも大きく引き伸ばしたところで、画質劣化に繋がらないことが多いのですよね。

「パソコンも持っていかないなら、撮影データはどうするのですか?」と言われますが、メモリーカードに入れっぱなしにしてパスポートと共に大切に肌身離さず持っています。何千枚と撮りますが、メモリーカードの容量が多いものが数枚あれば事足ります。

よい旅とよい写真




時代とともに記録ディスクもどんどん小さく高性能になってありがたいですよね。多少の衝撃や水没でもデータが消えることはなくなりましたしね! また、基本的にスナップも含め、海外での僕の撮影対象は瞬間的なものが多いので、レンズを何本も持っていても付け替えている時間はありません。付け替えている間に強盗に狙われる確率も上がります。そしてたくさん撮影機材を背負っていると、重さでテンションは下がってしまいます(笑)。このように「身軽にスマートに」行くことが僕の考える、よい旅とよい写真です。

心も体も軽くして、世界中を飛び回ろう!



【執筆者 TATSURO(たつろう)】


[All Photo by TATSURO]
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TATSURO(たつろう)

1981年広島市生まれ。大阪芸術大学在学中からフォトグラファーとして広告撮影に携わる。渋谷区に3階建てテラスハウス撮影スタジオを構え、エディトリアルで著名人撮影を主として活動。
2012~15年の4年間、日本での撮影仕事の合間にバックパッカーとして80カ国渡航。2015年、2大メーカーCanon、Nikon共に35歳以下の新進気鋭写真家として選出され、全国各地で個展を開催。また、大阪・東京で路上販売を03~07年まで5年間続け1万人以上に写真詩作品を届ける。

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